
このまま今の会社にいて、本当に大丈夫なのだろうか?
このように考えたことがある人は、決して少なくないはず。
特に35歳を過ぎたあたりから、「転職が難しくなる」「キャリアの選択肢が狭まる」という声を聞いたことがある人は多いでしょう。
実際に転職活動をしてみて、その「現実の壁」を初めて痛感する人も多いかもしれません。
過去、私自身も「今の会社でしか通用しない人間になっていないか?」という不安を抱えることがありました。
年齢を重ねるほど、自分の価値が下がっていくような感覚。何か行動しなければと思いながらも、具体的にどうすればいいのかがわからない…。
このような不安を抱かれている方に紹介したい書籍があります。黒田真行氏の著書『いつでも会社を辞められる自分になる』です。
本書は、ただの転職ノウハウ本ではありません。
「キャリアを自分で経営する」という視点から、どんな時代でも選ばれる人になるための具体的な戦略が詰まっています。
自分の「キャリアの賞味期限」に焦りを感じている人こそ、読むべき一冊。本記事では、本書の重要ポイントを3つの視点から読み解いていきます。
なぜ35歳から転職の難易度があがるのか
「35歳を超えると転職が難しくなる」とはよく言われますが、本書ではその実態を明確に解説しています。
中途採用で求められることが多いのは、この現場の第一線のプレイヤーです。このプレイヤーを束ねるマネージャーが多くの場合、30代後半です。だから、一般社員として採用するなら35歳くらいまでがいい、という企業が大半を占めます。
したがって、管理職ではなく、プレイヤーとして転職する場合には、35歳は一つの壁になります。これが「35歳の壁」です。引用元:いつでも会社を辞められる自分になる
また本書では、35歳から5歳ごとに「求人数は半減」すると指摘しており、35歳以降「5歳ごとに倍々ゲーム」で転職の難易度は上がっていくという解説がされています。
40歳で35歳の半分、45歳でそのまた半分の求人しか選べなくなる。年齢を重ねるごとに「選べる側」から「選ばれる側」へと、少しずつ移行していくのです。
さらに衝撃的なのは、選べる求人が減るだけでなく、求められるハードルも上がること。
年齢を重ねればマネジメント経験や専門性、即戦力などが前提条件になり、「経験はあるけど何ができるか分からない」では、書類選考すら通過することも難しいでしょう。
逆に転職をしても問題のない人は以下のような人材だと本書では解説しています。
会社を今すぐ止めても問題ない人は、端的に言うと今の会社でも成果を上げて満足度の高い仕事をしている人です。
引用元:いつでも会社を辞められる自分になる
つまり、「転職できる人」は、今いる場所でも価値を出せている人なのです。
キャリアの選択肢がどんどん減っていく現実を前に、私たちが考えるべきは、「年齢を重ねても、選ばれ続ける自分でいられるか?」という問いです。
では、「選ばれ続ける人」とは、いったいどんな人なのでしょうか?本書では、その答えを「転職市場で価値の高い人に共通する5つの原則」として解説しています。
転職市場で価値の高い人「5つの原則」
「また会いたい」と思われる人には理由がある。
あなたが採用担当者だったとして、どんな人であれば「ぜひ一緒に働きたい」と思うでしょうか?
本書では、転職市場で価値の高い人に共通する「5つの原則」を以下のように定義しています。
- 定量的な成果を生み出せる
- 採用市場で需要がある業界にいる
- 周囲の力を借りて5馬力、10馬力に変えられる
- 周囲を「巻き込んで」組織に好影響を与える
- 経営に近い目線で事業の存在目的を考えられる
まず、「定量的な成果」。これは、自分の実績を「数字で語れる力」です。
「がんばった」ではなく、「前年比150%の売上を達成」「リードタイムを20%短縮」など、客観的に示せる結果が評価の土台になります。
2つ目は、「需要がある業界にいる」こと。たとえ経験豊富でも、市場が縮小している業界では選択肢は限られます。
逆に、勢いのあるインターネット企業やヘルスケアなど成長産業での経験は、それだけでアドバンテージになります。
3つ目と4つ目は、どちらも周囲との関係性がカギです。
一人で100の成果を出すより、チームの力を引き出して500の成果をつくる人のほうが、はるかに市場価値が高いです。
そして、ただ協力を仰ぐのではなく、「この人のためなら力を貸したい」と思わせる巻き込み力が年齢を重ねるごとに求められるスキルになります。
最後は、「経営に近い目線」で事業の存在目的を考えられる視点です。
単なる担当者ではなく、「この事業は誰のために存在しているのか」「自分の役割がどう貢献しているのか」といった視点を持っている人は、どんな環境でも重宝されます。
この5つは、年齢や職種に関係なく、努力次第でどんな人にも再現性のあるスキルです。
大切なのは、これらの能力を「備えているか」ではなく、日々先を考えながら「育てているか」という視点なのでしょう。
「株式会社じぶん」の発想でキャリアを経営する
キャリアは、会社に預けるものじゃない。
本書の中で最も印象的なのが、「株式会社じぶん」という考え方。これは、自分自身をひとつの企業と見立て、キャリアを経営していこうという発想です。
今あなたが働いている会社は、あなたの商品(スキル・経験)を買ってくれているお客さんであり、給料はその対価。
仕事を通じて得たスキルや人脈は「資産」、自己研鑽は「研究開発費」、副業や挑戦は「新規事業」です。
この視点を持てるようになると、日々の行動がガラリと変わります。
「なんとなく与えられた仕事をこなす」から、「この仕事は自社の利益になるのか?」と、主語が「自分」になり、受け身から主体的なキャリアに一気にシフトできるのです。
さらに本書では「自分のピークは今ではなく、3年後にある」という考え方をもつべきと説いています。
目先の成果だけでなく、将来の理想像から逆算して、今なにを積み重ねるべきかを考える。これができる人は、どんな環境でも価値を発揮できます。
会社が変わっても、時代が変わっても、「自分という会社」は一生続いていきます。
本書は、ただ会社を辞めることを推奨している本ではなく、「会社に依存しない自分」になるための人生戦略を解説した本なのです。
自分に自信をもつために読むべき一冊
キャリアは、「なんとなく」では守れない時代です。
テクノロジーの進化、ビジネスの変化、そして働き方の多様化。
これからの時代、同じ会社で働き続けることが「正解」ではなくなりつつあります。だからこそ、キャリアは感覚ではなく、戦略として捉える必要があります。
『いつでも会社を辞められる自分になる』は、転職をすすめる本ではありません。今の会社で成果を出しながら、将来に備えるための「武器」と「視点」を持つための一冊です。
将来、どこで働くことになっても、「自分というキャリア資産に価値がある」と言える状態でいたい。そのために、何から始めればいいかを教えてくれるのが本書です。
キャリアに少しでも不安やモヤモヤを感じているなら、手に取って損はありません。読んだあと、きっと自分の未来への考え方が変わるはずです。
コメント