世界標準の採用に学ぶ。人が集まる組織の条件とは?

世界標準の採用に学ぶ。人が集まる組織の条件とは?
  • 求人を出しても応募が来ない
  • 面接してもピンとくる人がいない
  • 内定を出しても辞退されてしまう

昨今の採用における問題、これは一部の会社だけで起きている問題ではありません。多くの企業が同じような壁にぶつかっています。

しかし、それは本当に「人がいない」からでしょうか?
実は、「人材がいない」のではなく、「採用のやり方が古い」のかもしれません。

いまだに多くの日本企業では、「求人広告を出して待つ」「人材紹介に頼る」といった「受け身の採用」が続いています。

しかし、世界ではすでに企業が欲しい人材を自ら探しに行き、経営者が現場で口説きに動く「攻めの採用」が常識になっています。

本記事では、話題の書籍『世界標準の採用』をもとに、日本の採用が直面する5つの壁、GoogleやMetaが実践する最新の「タレントアクイジション(TA)」モデルなどを紹介していきます。

採用に課題を抱えている人事担当、経営者の方は必読の内容です!ぜひ最後までチェックしてみてください!

イケジンRadioでも本書について語り合っています!

目次

なぜ「採用がうまくいかない」のか?

なぜ「採用がうまくいかない」のか?

採用がうまくいかない。その原因を「人がいないから」「うちの業界は人気がないから」と、外部環境のせいにしていないでしょうか?

たしかに、少子高齢化による企業側の人手不足、売り手市場、即戦力重視の市場構造など、採用を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。

しかし、それだけでは説明がつかないほど、多くの企業が採用に苦戦しています。

その本当の原因は何か?本書『世界標準の採用』ではこのように問題提起しています。うまくいかない理由の多くは、企業の内側にあるということ。

たとえば、採用を「人事部の業務」としてしか捉えていない。選考では「過去の経験」ばかりを見て、「これからの成長」を見ていない。

面接官が育っておらず、評価も属人的。そもそも採用戦略が経営戦略と分断されていて、事業と人材がつながっていない。

こうした構造的な問題が、採用の成果を出にくくしているのです。

さらに厄介なのは、採用の問題が「成果が見えにくい」ために後回しにされやすいこと。

営業数字やコスト削減と違って、すぐに目に見える成果が出にくいからこそ、重要性が過小評価されやすいのです。

しかし、採用がうまくいかなければ、事業そのものが止まります。どんな戦略も、それを実行する人材がいなければ絵に描いた餅です。

今、採用がうまくいかない理由を外ではなく、内から見直す視点が求められています。

昭和型採用の5つの特徴

多くの日本企業では、いまだに「求人を出して、来てくれた人の中から選ぶ」という採用スタイルが主流です。

これは一見普通のことに見えますが、本書ではこれを「昭和型採用」と呼び、5つの問題点を指摘しています。

  • 受け身の姿勢
  • 殿様採用
  • やる気試し
  • 横滑りスペック
  • 出る杭不要

1つ目は受け身の姿勢。求人広告を掲載して待つ、エージェントに丸投げしている状況のことです。

2つ目は殿様採用。これは企業が面接の場で優位に立ち、「あなたは、雇う価値がある人なのか?」という空気を醸し出すこと。志望動機が弱かったり、自社に興味のない候補者はお見送りにしてしまうというのも「殿様採用」と言えるでしょう。

3つ目はやる気試し。企業側からスカウトして面接をセッティングしたのに、面接になると「なぜ弊社を選んだのですか?」と志望動機を求めてしまう矛盾した状況のことです。候補者からしたらビックリですよね。

ナンパされた相手から「自分のどこが好きなの?」と聞かれているようなものです。

4つ目は横滑りスペック。同業界・同職種の経験者ばかりを求め、変化や多様性を受け入れないことです。

本書では、優秀な人はあえて別業界での経験に重きを置くケースもあり、同業界ばかりを選んで歩いてきた人が、必ずしも優秀とは限らないと提言しています。

5つ目は出る杭不要。「優秀すぎる人は組織に合わない」として、無難な人材ばかりを優先してしまうことです。

これらはすべて、企業が主体的に人を選びにいくのではなく、「来てくれた人」の中からリスクが低そうな人を選ぶという姿勢が起因しています。

結果として「現状維持型の人材」が集まり、組織の革新力が低下してしまうのです。

採用とは、会社の未来をつくる意思決定です。受け身のままでは、変化の激しい時代に生き残ることは難しいでしょう。


世界の企業は「欲しい人材」は自ら探しに行く

世界の企業は「欲しい人材」は自ら探しに行く

アメリカや欧州の先進企業では、採用は「待つもの」ではなく「取りに行くもの」という発想が主流です。

Googleをはじめとしたグローバル企業は、求人を出す前に「この人に来てほしい」という人材を特定し、企業側から積極的にアプローチします。これが「タレントアクイジション(TA)」と呼ばれる考え方です。

タレントアクイジション(TA)とは
「タレント・アクイジション」とは、「タレント(Talent:才能がある人)」と「アクイジション(Acquisition:獲得)」を合わせた言葉で、優秀な人材を獲得するための活動を指します。

「採用」や「リクルーティング」といった言葉との違いは、対象となる活動の範囲や人材獲得に対する姿勢。採用やリクルーティングは採用広報や選考といった局所的な活動を指すのに対して、タレント・アクイジションはタレント人材の分析や採用戦略立案、採用ブランディング、入社後のオンボーディグなど、より広範な活動を含みます。

引用元:日本の人事部より

一見すると、日本でも最近流行している「ダイレクトリクルーティング」と似ているように思えます。

たしかに、ビズリーチやLinkedInなどのスカウト媒体を使い、企業が候補者に直接スカウトメッセージを送る手法が一般的になってきました。

しかし、多くの日本企業におけるダイレクトリクルーティングは、やや能動的になった「受け身採用」に過ぎません。

「定められた求人ありき」で、「いますぐ採れる人」を探してスカウトを送るだけでは、戦略的な採用とは言えないのです。

本書には「TAモデル」という採用活動について触れられており、その本質は、中長期的な目線で「未来の仲間」を先回りして口説きに行くことにあります。

たとえば、今は転職意向のない人でも、1年後、2年後に必要になるかもしれないと思えば、イベントやコンテンツを通じて接点を持ち、関係を育てていく。

Googleが「人材は資産である」と考え、リスト化された優秀人材を組織的にマネジメントしているように、日本企業も「採用=ストック型の資産形成」という視点に変わる必要があります。

TAは、単なる採用手法ではありません。企業の未来を設計する「戦略活動」なのです。

採用を「人事任せ」にしていませんか?

「人事が採用してくれない」「いい人が採れない」と不満を口にする経営者は多いですが、実はその裏にあるのは、「採用を人事部だけの責任」にしているという構造的な問題です。

採用は単なる業務ではなく、「経営そのもの」です。本書では、「経営者が採用にどれだけ時間を割いているか」が企業の競争力を左右すると断言しています。

たとえば、Meta(旧Facebook)の創業者マーク・ザッカーバーグは、社員数が数千人規模になっても、採用面談に自ら立ち会い、タレントの口説きに時間を割いていたと言われています。

また、日本でも急成長を遂げたサイバーエージェントでは、代表の藤田晋氏が新卒採用にがっつり関与していることは有名です。

採用は、「誰と働くか」という選択です。優秀な人ほど、経営者のビジョンや価値観を見ています。「経営者が本気で迎えてくれる」と感じたとき、候補者は初めて本気でその会社を選ぶようになります。

もしあなたが経営者であるなら、「採用にどれだけの時間を割いているか?」をぜひ自問してみてください。その答えが、いまの採用成果と直結しているかもしれません。


採用を変える5つのステップ

本書では、単なるテクニックではなく、採用そのものを仕組み化するための「5つのシステム」を紹介しています。これは、会社の中に“採用のサプライチェーン”を構築する考え方です。

1つ目は「TAシステム」。採用を専門とするチームを立ち上げ、従来の人事部門とは別に運用する体制です。

たとえば、あるIT企業では「社長直轄のTA室」を設け、優秀人材の採用に特化した部門をつくったことで、即戦力採用が飛躍的に改善しました。

2つ目は「探索システム」。LinkedInやエージェントだけでなく、社員紹介(リファラル)も同時に動かすのがポイントです。バラバラに動くのではなく、連携して動かすことで相乗効果が生まれます。

3つ目は「面接官育成」。属人的になりがちな評価を、AIフィードバックや構造化面接で標準化する仕組みです。

4つ目は「エンゲージ・システム」。応募から内定までだけでなく、入社後も含めた候補者体験(Candidate Experience)を設計します。

5つ目は「ホリスティックシステム」。これは採用活動を全体戦略として機能させる統合的な設計です。タレントを経営レベルで把握する視点が求められます。

これらを一度に完璧に整える必要はありませんが、意識的に1つずつ導入することで、採用の質は確実に変わっていきます。


本当に欲しいのは、ただの「即戦力」じゃない

採用現場ではよく「即戦力がほしい」という声を聞きますが、それだけに頼ると、会社の成長は頭打ちになります。

なぜなら、即戦力とは「すでに他社で培った能力をすぐ使える人」であり、同じような経験・価値観を持った人ばかりが集まりやすいからです。

本書では、世界標準の採用におけるキーワードとして「ポテンシャル評価」を挙げています。これは、今ある実績だけでなく、「この人が将来どれだけ成長するか」を重視する考え方です。

Googleでは、過去の成果よりも「学習意欲」や「問題解決の姿勢」に重きを置いており、それがイノベーションを支える多様な人材層を生んでいます。

また、日本企業では「成長してくれそう」という曖昧な基準で採用しがちですが、本書ではその曖昧さをなくすために「ポテンシャルモデル」という評価基準を設け、具体的な観察ポイントを提示しています。

たとえば「新しいことに挑戦した経験があるか」「失敗から学んだ行動があるか」など、行動ベースで見極める仕組みです。

大切なのは、今すぐの“即効性”よりも、未来に伸びる「可能性」に投資するという視点です。それが組織に新しい血を入れ、持続的な成長へとつながっていきます。


採用が変わると、会社が変わる

採用は、単なる人集めではありません。本書が一貫して伝えているのは、採用を変えることが組織そのものの変化を生むという事実です。

たとえば、サイバーエージェントでは「全社員がリクルーター」という文化を掲げ、現場社員がSNSや紹介を通じて積極的に採用に関わっています。

採用に全社員がコミットすることで、会社のカルチャーやビジョンが社外に伝わりやすくなり、ミスマッチも減っていきます。

また、本書では「会社全体のヘッドハンター化」という言葉が出てきます。

これは、採用担当だけが人材を探すのではなく、経営陣も、現場も、マーケティング部門も、全員が「いい人と働きたい」という共通の目的を持つ状態です。

そのためには、採用の情報をオープンにし、誰でも候補者にアクセスできる環境を整える必要があります。

採用の仕組みが変わると、社員の意識も変わります。組織の文化も変わり、成長スピードも変わります。だからこそ、採用は最後の仕事ではなく、“最初の経営活動”であるべきなのです。

【まとめ】採用活動は、経営戦略そのものである

採用とは、「今いる人を増やすこと」ではなく、「これからの組織をどうつくるか」という未来設計です。

『世界標準の採用』は、単なる採用手法の紹介にとどまらず、日本企業が長年抱えてきた採用の思考停止を鋭く問い直します。

経営者が本気で採用に関わるとはどういうことか。面接官を鍛えるとは何を意味するのか。

ダイレクトリクルーティングと「タレントアクイジション」の違いとは何か。すべてに具体的な答えがあり、行動につながる構造になっています。

「いい人がいない」のではなく、「迎える準備ができていない」だけかもしれません。

まずは本書を手に取り、組織の未来を採用から再設計してみてください。読むたびに、採用の見え方が変わる一冊です。

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この記事を書いた人

イケてる人事を紹介するメディア「イケジン」のコンテンツ作成、および運営。

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